米Googleの量子コンピュータは、本当に凄いの? 「量子超越性」実証とは? わかりやすく解説するよ

Google量子コンピュータ

米Googleの量子コンピュータのニュースが、業界で騒ぎになっています。

米Googleが自社の量子コンピュータを使って、スパコンを超える計算能力を実証したと発表。発表したのは先月なんですが、世界的に権威のある英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載されたことから、信憑性が高まっています。今は学会より先に、科学誌に掲載された時点で信じる人が多いようです。

でも、何が凄いんだか、仕組みも原理も、よくわからないですよね?「量子超越性」(Quantum Supremacy)とかいう考え方が鍵のようです。今日は、米Googleの発表を元に、「量子超越性」(Quantum Supremacy)についてご紹介します。

英科学誌「ネイチャー(Nature)」の発表
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1666-5

この記事には技術的な内容が少なく、「ただ、凄い!」ということが強調されている発表です。仕組みや原理については触れられていません。お暇な方はGoogle翻訳で読んでみてください。




簡単に言うと、技術的・科学的には意味があるけど、一般人には関係ないニュース

技術や科学の世界では、歴史的出来事かもしれません。「かも」というのは、まだ皆が認めるほど情報が行きわたっていないということ。一般的に、新しい発表があっても、他の人が何回も別の方法で検証して、ようやく、ほんとうかな、と信じられるようになるんです。Googleの発表内容を他の人が検証していない段階で、信じるのはちょっと早い、ということになります。

でも、ある程度の可能性がある、ということで、こんな風に騒ぎやニュースになってる。たぶん、みんな信じたいんじゃないかな。Googleの発表内容が本当か、間違いか、まだわからないけど、本当だったらいいね、と期待したい。それでいいんじゃないでしょうか。議論が巻き起こること自体で、前へ進んでいる感じがします。変化は楽しいんです。

量子コンピュータの凄さは、今まで実証されていなかった、という衝撃の事実!

そもそも、量子コンピュータって、今までのコンピュータとは動作原理が違っていて、従来のコンピュータとはけた違いに処理速度が速い、ということで話題になっていました。でも、なかなか実用的な結果が出ていなくて…

実は、その速さそのものも証明されていなかった、という衝撃の事実。なんじゃそりゃ!と言いたくなりますよね。



従来型のコンピュータの中で、最も計算速度が速いとされるスーパーコンピュータでさえ何万年もかかる計算を、わずか数分とか数秒で解けるかも、というのは、可能性として考えられていただけで、誰も実際に計算して検証したことがなかった、ということらしいです。

可能性として考えることと、実際に計算した結果を得る実証とは、別のこと。一般人にはその区別がよくわからないです。実験の内容は、暗号処理に使う乱数の処理に関する一部とか。これも、実感がわかないので、よくわからないですね。

私も、内容が専門的すぎて、よくわかりません。残念~! でも、わからなくて大丈夫です。一般人には関係ない世界ですから~

米Googleの発表は、「量子超越性」が論理的に証明された、世界初の実験結果

そんな難しい話ですが、Googleが世界で初めて、実際に量子コンピュータを使って計算した結果を、スーバーコンピュータと比較して示した。その差が圧倒的、という歴史的事実なんです。

「量子超越性」と呼ぶは、きちんと実験を行って、その結果を論理的に証明する必要があります。今回、論文として発表し、英科学誌「ネイチャー(Nature)」の審査(査読)を通過して掲載されました。そのことから「量子超越性」の定義に当てはまる(可能性が高まった)ということになります。ややこしいですね。



乱数を生成する「ランダム量子回路サンプリング」という問題を量子コンピュータに解かせた。この問題は、最先端のスーパーコンピュータでは解くのに約1万年かかると見積もられるが、Googleの量子コンピュータは3分20秒で解き終えたという。
出典:ITmedia  https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news141.html

でも、研究者の中では意見が分かれていて、まあ凄いけど、実用化への道のりの中では、まだまだ初期段階。大騒ぎするほどじゃないよね。と冷めた意見もあります。

米IBMはあからさまに、Googleの発表に反論する論文を出したとか。業界内での綱引きも激しそうです。

Googleが性能比較に用いた計算問題は、従来型のコンピュータだと約2.5日で解けるなどと米IBMが指摘。Googleが今回、論文を公開したことで、より検証が進みそうだ。
出典:ITmedia  https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news141.html

反論したIBMの論文は査読中で、今後発表になる予定。どちらが正しいかは、専門家の検証を待ちたいですが、どちらにしても研究が前進するので、いいことです。中の人達は、大騒ぎで徹夜かもしれませんが…

話題のキーワード「量子超越性」とは? 読み方、英語では?

ちなみに、「りょうしちょうえつせい」と読みます。量子で、超越、と覚えればいいですね。でも、試験には出ないので、覚えなくてもいいよ~

英語では、Quantum Supremacy。Supremacyは、超越、至上、最高位という意味で、そのまんまですね。おそらく、英語を直訳したのが「量子超越性」という感じです。



量子の力で、従来の概念を超える、という感じでしょうか。なんだか、ウルトラマンとスーパーマンのどっちが凄いか、みたいな話に聞こえます。もう、どっちも凄いで、いいんじゃないでしょうか。

量子コンピュータの実用化は、まだまだ先!? 「量子超越性」と「実用化」の壁とは?

今回の実験が本当だとしても、実用化には程遠い。直接影響があるのは、一部の研究者だけです。

実用性は度外視、実験のための実験、だから一般人には関係が薄い

今まで「量子超越性」の実証だけでも、何年もかかっているので、研究者としては、まずできることからやった、ということでしょう。今回の実験結果が実用に使える可能性はほぼゼロ。実用性は度外視です。そのくらい割り切らないと、達成できなかった難しい問題、とも言えます。

こういうのを基礎研究っていうんですね。一般人には、さっぱりわからない。去年、ブラックホールの姿を映像で捉えたというニュースも、一般人には無関係です。でも、そういう積み重ねが科学をつくっているんです。



歴史の後になって、あのときのあれが、変化のキッカケだった。という歴史上のできごと。その時点ではその影響は、誰にもわからないんですよ。歴史は後になって意味付けされる。そういうものだと思います。

ビットコインの暴落も無関係

なんだか便乗して、ビットコインが暴落してるとか話題にしている人がいますが、いつも乱高下してますから、今日が特別に下がっているとも言えないです。

そもそも、今回のGoogleの発表で暗号解読ができたわけではないです。暗号解読のためには、膨大な量子ビットが必要とされています。今回のGoogleの実験では、わずか53量子ビットが使われているだけ。量子コンピュータを使って暗号解読する具体的な方法、量子アルゴリズムもまだ開発されていません。

ということで、今の段階で心配することはないです。ビットコインの乱高下も、今回のGoogleの発表とは無関係。踊らされないように。



少し専門的な解説はこちら

これでもの足りないという方は、こちらの解説がいいかもしれません。丁寧に説明すればするほど、話が長くなって、わかりにくい。という典型です。実用例が出てこない中で、理論的に説明しようとすると、どうしても長くなっちゃうんですよね。全然、読み飛ばして大丈夫です。調子に乗って説明すると、間違いなく嫌がられますからん~ 残念!

出典:Qmedia
Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへ(前編)(後編)
https://www.qmedia.jp/google-supremacy-1/
https://www.qmedia.jp/google-supremacy-2/

Googleの量子超越は、ライト兄弟の初フライトのようなもの

わかりやすい説明が1か所だけあったので、紹介します。

ライト兄弟の有人飛行実験が行われた当時は、空中に浮上している時間はたった数秒でしかなく、実用からは程遠いものであった。しかしながら、航空機が進化した現在から振り返ってみれば、ライト兄弟の業績が、その後の進化を加速する重要なマイルストーンとなったのは言うまでもない。
出典:Qmedia Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへ(前編)
https://www.qmedia.jp/google-supremacy-1/

ちょっとジーンと来ちゃいました。ライト兄弟に例えると、わかりやすい。歴史的瞬間。でも、ライト兄弟が飛行機会社を作ったわけではない。基礎研究と実用化の壁を感じます。偉大な歴史の第一歩は、本当に小さな成果だったんですよね。

でも当時、どのくらいの人がライト兄弟の初フライトに注目していたのか。数秒浮かび上がった姿を見て、これが世界を変える、とどれだけの人が信じたか。当時は、メディアが発達していないので、そもそも知られなかったかもしれません。

現代では、噂が独り歩きます。「量子コンピュータが実用段階」とか言うのは、完全に間違ってます。ニュースは数本見て、確かめることが大切です。面倒な人は、このブログだけでも大丈夫ですよ。ww

出典:つくばサイエンスニュース(2019年10月15日)
Googleの「量子超越性」実証とは何なのか?
http://www.tsukuba-sci.com/

少し長くなってしまいました。なんだか凄いことかもしれないけど、専門的な話なので、そんなに騒がなくてもいいかな。というのが結論です。

ではでは~!




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